研究概要 |
同種生体材料による代用血管及び代用弁は,人工血管や機械弁,異種生体弁に比べ抗感染性や抗血栓性に優れており,その有用性については同種大動脈弁ではすでに臨床応用,報告されている(1,2).同種生体材料はその供給に制限があり,組織適合性を考慮した幅広い臨床応用を行うために組織の保存は重要であるが,液体窒素下での凍結保存法は事実上無限の保存期間が保証されており優れた保存法である(3).凍結保存同種血管を用いるにあたり,問題点としてあげられるのが移植後早期の血管内膜肥厚,遠隔期の石灰化や動脈硬化であるが,その成因にはいまだ不明な点が多い.そこで移植後早期に起こる新生内膜増殖の機序を明らかにしその予防策を講じることにより,早期には血管内膜肥厚を抑制し血管の開存性を高め,遠隔期には石灰化や粥状硬化性変化を軽減,その結果同種生体材料の寿命を延長させることが期待される.本研究では凍結保存同種血管移植後新生内膜増殖に及ぼす拒絶反応の影響を明らかにすると共に,組織抗原性を抑制もしくは除去することによる短期ならびに長期生存実験における影響について検討を行った. 凍結保存同種血管移植後の新生内膜肥厚は,凍結保存による機械的刺激と拒絶反応による創傷治癒の過程と考えられる.凍結保存血管移植後の免疫抑制もしくは細胞増殖抑制処置により内膜肥厚をコントロールすることが重要であり,これらの予防策を行なうことにより早期には血管内膜肥厚を抑制し血管の開存性を高め,遠隔期には血管壁の線維筋性の肥厚を抑えることから石灰化を軽減,その耐久性を高めることができ,その結果同種生体材料の寿命を延長することが可能であることが示唆された.
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