研究概要 |
肺癌tissue microarray (TMA)の充実と妥当性の検討:976例の肺癌からなるTMAを作成し、通常切片との比較、蛋白とmRNA発現の関連の検討などを行いその妥当性を確認した。TMAは多数例における高速な発現検討や染色条件の最適化に有用である。 肺癌の予後因子の多面的検索:非小細胞肺癌241例を用いTMAにおいてp53、RB、p27癌遺伝子Bcl2,EGFR、神経内分泌マーカーsynaptophysin (SP)、CD56およびTTF-1について解析を行った。それぞれの遺伝子の発現率はp53 57%,RB 15%,p27 84%,Bcl2 26%,EGFR 81%,SP 2%,CD56 1.3%,TTF1 58%であった。予後との関連では、TTF-1陽性例がわずかに良好の傾向を示したに過ぎなかった。 肺癌の生物学に重要な遺伝子の検索:TTF1は末梢肺においてその発達のすべてのステージで発現されており、肺の腺癌の72%で発現していた。これらではSPAの発現とよく相関しており、形態学的にも末梢の肺とよく類似していた。TTF1は末梢肺のlineage markerとして有用であると考えられた。 14-3-3sigmaの発現を肺のneuroendocrine carcinomaにおいて検討した。カルチノイド、非定型カルチノイド、神経内分泌型大細胞癌、小細胞癌の多くで発現の減少を認めた。一方、75例の非小細胞肺癌では正常肺組織と同等の発現が保たれていた。 マスピンは細胞浸潤や運動に関連していると考えられているセリンプロテアーゼ阻害分子であるが、その発現は末梢気道のマーカーであるTTF1やSPPB1の発現と逆相関を示し、中枢気道上皮の細胞特性と関連していた。 以上のように、TMAによって多くのサンプルを短時間で、かつ同一の条件で処理することが可能であった。肺癌の分子病態の解析において非常に有用である。
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