研究概要 |
乏突起膠腫には補助療法に非常に感受性の高い一群があり,光顕による病理所見だけでは時としてこのような腫瘍を区別するのが困難なため有効な分子マーカーの確立が期待されている.一番染色体短腕の欠失は,乏突起膠腫の化学療法感受性と良く相関するとの報告が相次いでいるが,未だにその原因遺伝子は同定されていない.OLIGは神経前駆細胞に特異的に発現し,オリゴデンドロサイトヘの分化を誘導する転写因子で,乏突起膠腫に特異的に発現が高いことが示された.OLIGが乏突起神経膠腫の特異的マーカーであり,ひいては化学療法の感受性と何らかの関連を有するかを検証するために,種々の神経膠腫48例でのOlig1/2の発現レベルの解析,Olig2特異抗体を用いた免疫組織学的検討,そして腫瘍の種類,悪性度とOLIGの発現の関連につき評価した結果,Olig1,Olig2共に乏突起膠腫群のみならず,種々の神経膠腫で発現が認められた.膠芽腫(GBM)ではOlig1とOlig2の発現は他の群と比較し有意に低下していた.免疫染色にてOLlG2は腫瘍細胞の核に陽性となり、陽性率はmRNAの発現が高かった退形成星細胞腫(AA)では平均33%であり,退形成乏突起膠腫(AO)ではほとんどの腫瘍で90%以上と高値であった.GBMでは陽性細胞はごくわずかであった.これらの結果から,Olig2のmRNAではいずれも発現が高値であるAAとAOとの鑑別も免疫染色により可能であることが判明し,Olig2のmRNAの発現,免疫染色により悪性神経膠腫AO, AA, GBMの鑑別が可能であることが示唆された.本研究の結果Olig2のmRNAの発現とOLIG2の免疫染色を併用することにより、より精度の高い神経膠腫の病理診断を得ることが可能と考えられ,化学・放射線療法への感受性との相関については今後の研究課題と考えられた.
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