研究概要 |
平成14年度には研究課題である「脳虚血における活性酸素代謝の解明」の第一段階として脳虚血・再灌流モデルにおける各種アミノ酸の発生動態について研究を行い,マイクロダイアリシス法により脳内興奮性アミノ酸測定法を確立し,また一過性脳虚血モデルを確立して虚血後の脳内興奮性アミノ酸測定を行った.平成15年度はヒトSOD1遺伝子導入マウスに脳梗塞巣を作成し,活性酸素代謝について検討する予定であったが,技術的問題のためマイクロダイアリシス法による活性酸素測定が困難となった.そこで,mitogen-activated protein kinase familyのextracellular signal-regulated kinase (ERK)に着目し,この酵素と脳虚血後の活性酸素発生,虚血後神経細胞死との関連について検討した. 野生型及びSOD1遺伝子導入マウスに60分の一過性中大脳動脈閉塞による脳虚血を作成した.Hydroethidine法で活性酸素発生を評価し,リン酸化(活性型)ERKの表出を免疫組織染色で観察し,Western blotで定量した.また,細胞死におけるアポトーシスの役割を推測するため,ヒストン断片化DNAをELISA法で評価した.野生型マウスにおいて,虚血1時間後に活性酸素のひとつであるsuperoxideの増加がみられ,1-4時間後にリン酸化ERK発現が増加し,24時間後にはヒストン断片化DNAが増加した.リン酸化ERK発現部位は神経細胞の局在に一致していた.SOD1遺伝子導入マウスでは野生型に比べ,superoxide発生,リン酸化ERK表出,ヒストン断片化DNA増加はすべて抑制されていた.虚血後に発生する活性酸素はERKを活性化することによりアポトーシスを引き起こす可能性があると考えられた.
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