研究概要 |
本研究では、高LET重糧子線により脳腫瘍周辺に生じるラジカルを化学的に減少させることで周辺組織の放射線傷害を防ぎ、悪性脳腫瘍を高LET粒子線の直接作用にて効率良く治療することを目的とした。まず、エックス線と炭素線を用いて水溶液中に生じるヒドオキシルラジカル(・OH)をElectron spin Resonance(ESR)を用いて定量化した.その結果、・OHの産生量は、照射線量依存性に増加し、またLETが上昇するにつれて徐々に減少することが明らかになった。しかし、LETが20,40,60,80 and 90keV/μmでは、それぞれX線の86,78,73,69および70%存在することが示され、予想よりも高い値となった。さらに、DNA照射後の酸化産物である8-hydroxydeoxyguanosine(8-OHdG)を定量化して、ラジカル消去剤3-methyl-1-phenyl-2-pyrazolin-5-one(エダラボン)によるラジカル消去効果を検討した。エックス線照射後に生じる8-OHdGは線量依存性に増加した。また、炭素線照射後の8-OHdGのレベルはLETが高くなるにつれて減少し、LETが80keV/μmではエックス線の約40%となった。そこへエダラボンを添加するとその濃度依存性に8-OHdGの産生量が抑制さることが明らかになった。以上の結果から、重粒子線照射においても特に低LET領域では水溶液中に・OHが産生されておりその間接効果は無視できないことが示され、その間接効果をエダラボンにて抑制できれば粒子線の直接作用をより強調した照射が可能となることが示唆された。
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