研究概要 |
PACAPは研究分担者である宮田らがヒツジ視床下部抽出物より単離,構造決定されたセクレチンーグルカゴンファミリーに属する神経ペプチドであるが,これまでin vitro系でのさまざまな細胞死に対するneuroprotectiveな作用が報告されている.一方MaxadilanはPACAPの選択的受容体であるPAC1のアゴニストであるが,未だその神経細胞死に対する保護効果は明らかにされていない.本研究では胎仔ラット脳から分離した大脳皮質の初代培養を行い,低酸素・低グルコース負荷におけるPACAPまたはMaxadilanの神経細胞保護効果を評価した.その結果,両薬剤とも用量依存的に生存細胞の増加が認められ,特にMaxadilanにおいてはPACAPより高い保護効果が認められた.また虚血により障害された細胞はTunel染色陽性でありアポトーシスによる細胞死と思われた.in vivo実験においては,両薬剤とも生理学的パラメータに影響することなく神経細胞死に対する有意な保護効果が確認できた。以前われわれは全脳虚血後の海馬CA1細胞でのチトクロームCのミトコンドリアから細胞質への移行、その後のapoptosis実行因子であるcaspase-3の経時的活性化の出現を報告したが、この研究ではMaxadilan投与により、虚血後のcaspese-3の活性化が抑制されることが確認され、また虚血後も安定してPAC1レセプターのmRNA、Proteinの発現が認められた.その保護効果はPAC1アンタゴニストであるMax.d.4により抑制され、またMaxadilan投与後早期に,リン酸化CREBの上昇が認められることも確認できた.以上より,PACAPおよびMaxadilanはPAC1レセプターを介して下流のカスケードを活性化し,特にCREBを介した経路によりcaspaseを抑制することで神経細胞保護効果を発現することが示唆された.
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