研究概要 |
初年度は、放射線照射により実際に放射線増感promoter下流の遺伝子発現が増幅することを確認した。まずPCI-neo plasmid vector(Promega)を母体とし、放射線増感promoterとしてEgr-1 gene中のCArG elementの4回繰り返し構造であるE_4とCMVのchimeric promoterを組み込み、下流にEGFP、HSV-tkを挿入したplasmid vectors(pCI-neo/E_4/EGFP,pCI-neo/E_4/HSV-tk)を構築した。それぞれのcontrol vectorとしてE_4の挿入されていない単なるCMV promoterを有する各種plasmid vectors(pCI-neo/EGFP,pCI-neo/HSV-tk)も同時に構築した。これらの構築plasmid vectorを用いてU251-MG/U373-MG glioma cell lineにE_4/EGFP、EGFPを導入し、放射線3Gyを照射して蛍光顕微鏡下観察およびWestern blottingで評価したところ、E_4/EGFP導入群のみEGFP発現強度が照射6〜54時間後で照射前の1.3〜1.4倍に増強することが確認された。ついで、U251-MG/U373-MG glioma cell lineにE_4/HSV-tk、HSV-tkを導入しGCV投与後に放射線(1,3,5Gy)を照射しMTT assayで評価したところ、1)物理化学的刺激でも放射線増感promoterが作動してしまう可能性があるのでこれらの要素を排除できる実験系を構築する必要があること、2)E_4/HSV-tk導入群は確かに線量依存的に細胞死が促進されるが、controlであるHSV-tk導入群にくらべ統計学的に有意ではないので強力な放射線増感promoterの構築を考慮すべきであること、が示唆された。2年度は、この結果を踏まえ、放射線増感作用がE_4より強いとされるE_<9ns-2>を用いて初年度と同様の検討を行なった。すなわち5'-GATCT(CCATATAAGG)_9GCGAT-3'と5'-CGC(CCTTATATGG)-3'のoligo-probe pairからE_<9ns-2>を構築し、pCI-neo plasmid vector(Promega)を母体として初年度と同様の手順で各種plasmid vector(pCI-neo/EGFP,pCI-neo/E_<9ns-2>/EGFP,pCI-neo/HSV-tk,pCI-neo/E_<9ns-2>/HSV-tk)を構築し、それらを用いてU251-MG/U373-MG glioma cell lineおよびC6 rat glioma cell lineにE_4/EGFPを導入し、放射線3Gyを照射して蛍光顕微鏡下観察およびWestern blottingで評価したところ、予想に反してEGFP発現は照射後に有意な増強を示さなかった。5,7,10Gyで同様の検討を行なうもやはり有意差は生じなかった。E_<9ns-2>/HSV-tk、HSV-tk導入後放射線照射によるMTT assay評価法では、物理化学的刺激が放射線増感promoterを作動させる可能性が示唆されたことから、その活性化が消失している72時間後に放射線を照射しての評価を行なった。その結果、U251-MG・U373-MG・C6いずれにおいても、E_<9ns-2>/HSV-tk導入群で有意な増殖抑制は認められなかった。今後はE_4を用いHSV-tk導入72時間後放射線照射によるMTT assayを再評価し、C6および血管内皮前駆細胞へのE_4/HSV-tk導入後、当初計画したin vivo実験へと進む予定である。
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