研究概要 |
Lewis系ラットにアジュバント(M.Butyricum)を両足底に感作後(day 0),右膝関節内にAxCAChM-I(Chondronodulin I recombinant Adenovirus),左膝関節にAxCALacZ(β-galactosidase recombinant Adenovirus)をday 0,7,14,21に注射した。同様にPBSを両膝に注射する群も作成した。経時的に関節炎(肉眼的スコアー,足蹠腫脹容積測定)と体重の変化を観察し、28日目に屠殺しX線評価のあと,膝関節周囲の組織標本を作製し滑膜増殖や血管新生の程度,軟骨・骨破壊をスコアー化し評価した。 肉眼的に膝関節はいずれの群もday10〜14で腫脹を認め,体重は,同時期をピークに減少傾向にあった。体重の変化は関節炎に伴うものと考えている。 免疫染色で,AxCAChM-I, AxCALacZ処置群の膝関節内の滑膜内に遺伝子が導入されたことを確認した。 HE染色では,AxCAChM-Iを膝関節内に注射した群の方が,AxCALacZの注射群と比べ,滑膜の増殖,骨軟骨の破壊など関節炎の所見が抑制されていた。しかし,AxCALacZを膝関節内に注射した群とくらべ,PBSを膝関節内に注入した群の関節炎が軽度である傾向を認めた。ベクターとして用いるアデノウイルスそのものが引き起こす炎症が問題と考えられた。血管新生抑制についても,AxCAChM-Iを注射した群の方が,AxCALacZの注射群と比べ抑制されていたが,PBSを注入した群の関節炎が軽度である傾向が認められた。 アデノウイルスベクターの膝関節内局所投与による多臓器への暴露及び局所関節への影響の確認のため,肝臓や非投与関節における導入遺伝子発現状況を免疫染色で確認したが,明らかな導入遺伝子発現を認めなかった。 関節リウマチにおいて,血管新生抑制因子コンドロモジュリンIが増殖性滑膜炎及びこれに伴う骨関節破壊の抑制に働く可能性が示唆されたが,アデノウイルスをベクターとして用いる事の検討が必要と思われた。
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