研究概要 |
腰椎椎間板ヘルニア及び椎間板変性は遺伝的素因が存在する。我々は、腰椎椎間板ヘルニアおよび椎間板変性に関与する、疾患感受性遺伝子の同定を慶応義塾大学、京都府立医科大学、理化学研究所の協力のもと大規模な患者-対照相関解析を行っている。これまでの検討ではVDR遺伝子のエクソン9に存在する,RFLP (restriction fragment length polymorphism)でTt遺伝子型を持つ個体がTTを持つ人と比較して(Tアレルは制限酵素で切断されない,tは切断されるアレル)有意に椎間板変性を有する可能性があること、またAGC1遺伝子のエクソン12に存在するVNTR (variable number of tandem repeat)のうち、短いアレルを持つ個体で椎間板変性度が強い可能性があることがわかった。一方、以前に欧米や日本の研究者から椎間板変性疾患関連遺伝子として報告のあったCOL9A2、COL9A3、MMP3の遺伝子多型を検討したところ、これらとの関連は認められなかった。しかし既知のデータとは異なりCOL9A2のあるハプロタイプと椎間板変性が関連している可能性を確認し報告した。さらに対象を拡大し、腰椎椎間板ヘルニア患者400人以上、コントロール600人以上で30以上の候補遺伝子について、PCR法,primer extension法,Taqman PCR法,Invader法,PCR-direct sequence法を用い遺伝子多型を分析し、患者-対照相関解析を行った。その結果、cartilage intermediate layer protein (CILP)遺伝子の1395Tにおいてp=0.0000068(アレル頻度に基づく)の相関を認め、これが疾患関連遺伝子である可能性が高いと判断された。そこでCILP遺伝子がいかなる機序で椎間板変性を引き起こすかについてin vivo、in vitroの検討を行ったところ、CILP遺伝子はTGF-βを介して椎間板変性を引き起こしていることが明らかとなった。
|