研究概要 |
人工関節置換後に発生する骨溶解は、骨欠損が大きな場合、治療に難渋する。本研究は、人工関節置換後の骨溶解を解明し、有効な治療法を開発することを目的とした。平成14年度の研究では、マウスの頭蓋骨に人工関節材料のポリエチレン粉、チタン粉、アルミナ粉、ジルコニア粉を移植することにより骨溶解のモデルを作成し、骨溶解の程度は生体材料の種類により大きく異なることを示した。また、炎症性サイトカインであるTNF-α,IL-1β,IL-6が骨溶解に強く関与していることを見いだした。内軟骨性骨化の実験系では、骨芽細胞の増殖活性をもつサイトカインであるb-FGFは、骨の分化に関して生体内で抑制的に働き内軟骨性骨化を抑制することを示した。平成15年度の研究では、人工関節材料のポリエチレン粉、チタン粉、コバルトクロム粉による骨溶解とTNF-α,IL-1β,RANKL, OPGの経時的産生量を検討した。TNF-α,IL-1βはポリエチレン粉、チタン粉、コバルトクロム粉いずれによっても誘導され骨溶解を引き起こしたが、RANKL/OPG比はポリエチレン粉、チタン粉では高いがコバルトクロム粉では低く、生体材料の種類により破骨細胞誘導に2種類の経路があることを見いだした。一方、骨溶解に対する生物学的活性骨移植法として、scaffoldとサイトカインを備えた同種骨に加えて、自家骨髄細胞あるいは自家骨髄細胞由来骨芽細胞を骨欠損部へ移植する動物実験を行った。同種骨にはstructural allograftとmorsellized allograftの2種類を使用した。いずれの同種骨を使用した場合も、自家骨髄細胞由来骨芽細胞を加えることにより、同種骨単独より多くの骨形成を誘導しうることが、レントゲン学的、組織学的評価にて判明した。この結果は、今後発表していく予定である。
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