研究概要 |
(目的)我々は黄色ブドウ球菌の莢膜多糖体抗原が本菌に対する感染防御抗体を誘導することを明らかにしてきた。本来の目的は、ヒト血清中の黄色ブドウ球菌に対する特異抗体を用いて生体材料を被覆することにより、同菌の付着が抑制されるか否か検討することである。 (方法)健常人28名と明らかな感染症を合併していない糖尿病患者20名、計48名のヒト血清中の黄色,ブドウ球菌莢膜多糖体に対するIgM, IgG, IgA抗体活性を酵素標識免疫定量法(ELISA)阻止試験にて測定した。そのうち黄色ブドウ球菌Smith株に対する抗体活性が高い血清(IgG 57%,IgM 18%,IgA 1%)と抗体活性が低い血清(IgG 0%, IgM 1%, IgA 0%)を実験に用いた。1000倍あるいは100倍希釈のヒト血清を用いて昨度と同様の方法にてプラスチック固相のpercent Index of adherence(IA %)を求め、抗体活性とIA %との関係を検討した。 (結果)1000倍希釈のヒト血清では、抗体活性の高い血清前処置群のIA %は平均26.9%,抗体活性の低い血清前処置群では平均31.7%であった。100倍希釈のヒト血清では、抗体活性の高い血清前処置群のIA%は平均19.7%,抗体活性の低い血清前処置群では平均25.3%であった。 (考察)黄色ブドウ球菌Smith株に対する抗体活性の高いヒト血清で生体材料を前処置することにより、同型菌株の付着が抑制される傾向がみられた。さらに、!000倍希釈より100倍希釈のヒト血清の方が付着を抑制する傾向がみられた。すなわち、生体材料への黄色ブドウ球菌の付着は、抗体の含有量に依存して抑制されると言える。
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