研究概要 |
【背景と目的】敗血症性ショックでは、種々のサイトカインが誘導され、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が発現し一酸化窒素(NO)が産生される。本症による多臓器障害は、iNOSによる過剰なNO産生が原因であることが明らかになってきた。iNOSの発現誘導にはエンドトキシンやサイトカイン(TNF-α,IL-1)によって活性化されるnuclear factor kappa B(NF-κB)が共通の転写因子として最も重要である。そこで敗血症性ショックモデルにNF-κBを阻害するN2733を投与してiNOS発現を遺伝子レベルで阻止するか否かを検討した。 【対象と方法】バルビタールで麻酔し人工呼吸を施行した雄のビーグル犬(n=23)を対象とし、1)エンドトキシン群(n=8):エンドトキシン(250ng/kg/min)を2時間持続投与、2)エンドトキシン+N2733群(n=8): N273330mg/kgをエンドトキシンと同時に静注後10mg/kg/hrの速度で6hr持続投与、3)N2733群(n=7): N2733のみを投与、の3群に分類した。血行動態(心拍数、血圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、中心静脈圧、心拍出量、体血管抵抗、肺血管抵抗)、血液ガス(pH,PaO_2,PaCO_2,HCO_3^-,BE)、酸素消費量、酸素運搬量、乳酸値、肝機能(AST,ALT,T.Bil)、腎機能(尿量、クレアチニン、クレアチニンクリアランス)、胃pHiなどのパラメーターを経時的にモニターし、これら各種パラメーターへの影響を検討した。 【結果】N2733は、酸素運搬量を増加させ、エンドトキシンによって誘発される低血圧や、代謝性アシドーシス、胃粘膜アシドーシスを阻止した。しかし、腎機能や肝機能にはN2733は影響しなかった。 【結論】これらのことより、NF-κB活性の阻害はエンドトキシンショックにおいてハイポダイナミックショックや胃粘膜血流低下を阻止する可能性があることが示唆された。
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