研究概要 |
手術直後、特に8時間以内は術後痛を強く訴えることが多い。NO-cyclic guanosine monophosphate(cGMP)の伝達系は、麻酔や鎮痛に関して重要な役割を果たしていることが示唆されている。吸入麻酔薬は低濃度で知覚過敏を起こす可能性が示唆されている。この知覚過敏の発生及びその持続に関して脊髄での麻酔薬による下向性抑制遮断がメカニズムのひとつとして考えられている。NOS inhibitor、7-nitroindazole(7-NI)は,前年度までの研究により、ハロタンMAC及びRighting reflex ED50(RR)に対して影響することがわかった。手術による肉眼では見えない末梢神経の損傷は避けられない。知覚過敏は,吸入麻酔薬だけではなく,末梢神経の障害によっても発生することが知られている。末梢神経の障害による疼痛過敏もその発生の原因として脊髄での疼痛抑制メカニズムが有効に働かないことが考えられる。我々は,吸入麻酔薬による疼痛過敏と末梢神経の損傷による疼痛過敏の共通のメカニズムを調べるために,新しい疼痛過敏モデルの開発をおこなった。従来のChungらの方法は,背中側からの脊髄神経へのアプローチであり,その手術過程で細い神経の損傷を引き起こしている可能性が高く,手術反対側まで疼痛過敏を引き起こしていた。今回我々の腹腔側からでのアプローチでは,手術半体側の知覚過敏は起こってもわずかであり,脊髄での下向性抑制遮断を明らかにするためには有利であることがわかった。前年度のデータを詳細に検討した結果、我々が行った背中からのアプローチによる神経損傷の手術は,従来のChungらの方法とコントロールでも知覚過敏の程度に大きな差が生じてしまっていた。この現象は腹腔側からのアプローチでは生じていないので、今回の手術が必ずしもChungのモデルと相同ではない可能性があり、再度背中からの手術をやり直す必要性が出てきてしまい本年度はそれをやり直した。その結果コントロールでも知覚過敏の程度にまだ差が生じている。これは手術方法の違いにより基本的な差が手術直後に生じている可能性があることが示唆された。
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