研究概要 |
心血管整合/ランス値(Ees/Ea)を他の汎用循環モニター(心エコー,動脈波形解析装置)を用いて計測した循環測定値と比較検討し,Ees/Ea値の循環モニターとしての意義を明らかにした.心筋梗塞ではEes/Ea値が高血圧群(1.46±0.29)や健常高齢者群(2.17±0.29)に比べて有意に低い所見が認められた(0.87±0.07).一方、AI(augmentation index)値,PWV(pulse wave velocity)値は,心筋梗塞群と高血圧群の間で有意差は認められなかった.このことから,他の血管壁硬化等の指標からは得られない統合的な心血管機能が本法により測定できることが示唆された.更に、本法によるEes/Ea値は,心エコーにより測定した駆出率(EF)と良好な相関関係が得られた(R=0.79;RMSE=0,08).また,本法によるEes/Ea測定値の正常範囲は,成人において報告されている侵襲的方法により測定された従来のEes/Ea値とほぼ一致していた.小児においては,Ees/Ea値は成人に比べて,有意差は認めなかったものの大きめであった.このように,本算定法によるEe/Ea測定が心血管機能を簡易に判別できる優れた指標と成り得ることが期待される.Ees/Eaを末梢橈骨動脈圧波形から非侵襲的に測定するための研究においては,動脈圧系を4要素(動脈コンプライアンス,末梢血管抵抗,大動脈特性インピーダンス,慣性)を用いてモデル化し,圧波伝播特性を4要素に還元して検討した.その結果,循環動態が測定できれば,その循環動態に応じたモデル伝達関数を用いて橈骨動脈圧波形から大動脈波形が推定できた.本研究は,オンラインで心血管整合バランス値を求める上で重要な大動脈圧波形を,どのような循環動態下においても末梢橈骨動脈圧波形から非侵襲的に推定するための,重要な戦略となった.
|