研究概要 |
マウスの出血性ショックモデルとして、左大腿動脈よりカテーテルを挿入し、ヘパリン投与後脱血して血圧を40mmHgにgo分保つ。蘇生方法として、高張食塩液(Hs:7.5% NaCl)を4ml/kgと脱血血液で蘇生した場合:HS+SBと2LR+SB(2倍量の脱血血液量のラクテックリンゲル液と脱血血液)とSham群とコントロール群での、小腸での障害とアポトーシス発現との関係を蘇生後2h,6h,24h,48hで観察した。小腸障害は2LR+SB蘇生群の6hの時点で他の群に比較して有意に出現し、また同時期にHS+SB 6h群は2LR+SB 6h群よりも有意に障害の程度が抑制されていた。一方、アポトーシス発現をTUNEL法で検索すると、アポトーシスの発現は2LR+SB群の2hの時点で最も強く出現していた。同時期のHS+SB 2h群は2LR+SB 2h群よりも有意に抑制されていた。これらをWestern blot法でアポトーシス関連蛋白を検索すると、活性化Caspase-3がHS+SB 2h群が2LR+SB 2hよりも抑制されているのが観察された。さらに、アポトーシス抑制蛋白であるHSP40,HSP70を検索した。これら蛋白修復機能を持つ分子シャペロンのHSP40,HSP70は高張食塩液投与により増強しており、出血性ショック後の臓器障害防御効果に関与している可能性が示唆された。また、胸腺、脾臓、肝でのアポトーシス発現をみると、出血性ショック蘇生後2hの時点で最も強く障害が見られた。一方、Western blottingではcaspase-3の増強が見られず、肝ではJNK, FASなどの関与が考えられ、臓器によるアポトーシス発現のメカニズムの違いが推察された。今後、アポトーシス発現及び抑制のメカニズムを解析することにより、出血性ショックなどの後に続発する臓器障害の防御に役立っものと思われる。
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