研究概要 |
1)セルトリ細胞、およびライデッヒ細胞間の接着の形態学的検討 今回使用した不死化セルトリ細胞では細胞間にTight Junctionを形成するが、この形成の変化を培養条件を変えることにより免疫染色および電子顕微鏡で検討した。培養温度を33℃および39℃に変化させて培養したところ、39℃で培養したほうがTight Junctionの形成が強かった。ライデッヒ細胞で同様の検討を行ったが、Tight Junctionの形成は明らかではなかった。しかしライデッヒおよびセルトリ細胞の細胞間相互作用の解明についてはこれら細胞に未分化精細胞を加えた精巣組織の再構築はできておらず、今後の検討課題である。 2)セルトリ細胞およびライデッヒ細胞の分化誘導時に変化する遺伝子群の解析: セルトリ細胞を39℃で培養すると細胞周期のS期の減少とG2/M期の増加を伴う細胞増殖停止が観察された。IntelliGeneマイクロアレイを用いて解析した結果、細胞増殖停止時に2倍以上変化する遺伝子が1,080個中29個(増加:20,減少:9)明らかになった。一方、ライデッヒ細胞を39℃で培養すると細胞増殖が抑制され、17β-HSD type 1 mRNA量の増加と17β-HSD type 3 mRNA量の減少および形態変化が観察された.この17β-HSD mRNAの発現量の変化は,新生児期のライデッヒ細胞の分化の過程に類似していた。この分化の過程で2倍以上変動する遺伝子をAtlasマイクロアレイで解析した結果,1,081個の遺伝子の中で24個の遺伝子発現が増加し,7個の遺伝子発現が減少した.Tie2,zinc transporter 4とgalanin receptor 1は各々13.5,8.3と7.9倍の増加を認めた。今後は変化のあった遺伝子のうち細胞間の接着に関与するものを選んで、さらにその発現の変化を経時的に追うなどの検討を行うことが必要と思われた。
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