研究概要 |
前立腺癌細胞株であるJCA-1細胞においては24,48,72時間培養後にそれぞれ上清中のLIF活性は104pg/ml,220pg/ml,403pg/mlと経時的に上昇した。JCA-1細胞においてNFκB阻害剤は培養上清中のLIF活性を抑制した。一方、0.01,0.1,1,10,100ng/ml濃度のhuman recombinant LIFは前立腺癌細胞株であるPC3,DU145ならびにJCA-1細胞に対してin vitroにおいて有意な細胞障害活性を示さなかった。非担癌ヌードマウスの血液中にはLIF活性は検出されなかったが、PC3やJCA-1担癌ヌードマウスにおいて血清LIF活性が上昇し、同時に体重が減少することを認めた。同時に、血清IL-6活性の上昇と体重減少も認められた。前立腺癌患者の血清LIFとIL-6活性を測定したところ、未治療前立腺癌患者ではLIF活性は検出されず、再燃前立腺癌患者においてもLIF活性はほとんど検出されなかった。血清IL-6は前立腺癌患者において検出され、未治療前立腺癌患者ではstageDにおいて上昇しており、再燃例ではさらに有意に上昇していた。血清IL-6の上昇例では血清アルブミン値、ヘモグロビン値、body mass indexなどが有意に低下していた。血清IL-6とアルブミン値、ヘモグロビン値、body mass indexならびにperformance statusとの間に有意な相関関係が認められた。JCA-1担癌マウスでは悪液質が認められるが、NFκB阻害剤により体重、epididimal fat, gastrocnemius muscle、血清albumin, triglyceride、ヘマトクリット値の低下が有意に抑制され、同時に血清IL-6が有意に抑制された。以上から、前立腺癌担癌マウスでは血清LIFやIL-6が上昇し、体重減少が認められるが、前立腺癌患者においては悪液質とより関連が強いのはIL-6であることが示唆された。
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