研究概要 |
卵子形成時には胚発生能が獲得されるが,卵子成熟培養系の向上にはその獲得機構の解明は非常に重要な課題である。既にBDF1雌マウス17日齢由来卵子と24日齢由来卵子を体外成熟させ,体外受精,体外培養を行なうと胚発生能(具体的には胚盤胞形成能)に有意な差があることを見いだしていたので,この発生能の差異を利用して,卵子形成時における胚発生能関連遺伝子の検索を行なった。卵子RNAからcDNAライブラリを作成し,遺伝子発現パターンの違いをSubtraction法により調べた。14年度には,24日齢由来成熟卵子に特異的に発現する遺伝子のクローンを20個単離し,DNA配列を決定出来たものは15個であった。BLAST検索によるとそれらのほとんどは未同定配列であったが,レプチンレセプター遺伝子が24日齢由来卵子に多く発現していることがわかった。胚培養時にレプチンの添加が胚発生を促進する報告もあることから,卵子の発生能獲得とレプチン・レセプターの発現に何らかの関連があることを示唆している。15年度も引き続き,卵子形成時における胚発生能関連遺伝子の検索を行なった。24日齢由来成熟卵子に特異的に発現する可能性の高い遺伝子クローン5l3個についてDNA配列を決定した。BLAST検索によりspindlin,bmi-1,cyclin B1,E330034G19Rik,Jagged1,Ndfip2などが同定された。その中でもspindlin遺伝子が24日齢由来卵子で多く発現していることがわかり,定量的リアルタイムPCRによりその差次的発現も確認した。spindlinは細胞分裂に関与する遺伝子として発見された蛋白質で,まさに卵子の発生能獲得と関連性が高いと思われる。
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