研究概要 |
はじめに,ウイルス検出のための検体として採取時の侵襲が少なく繰り返し採取可能である咽頭うがい液に注目し,うがい液から簡便かつ確実にDNAを抽出する方法を検討した。その結果,血液用50mlDNA抽出キットの用いることで,超遠心とエタ沈による手作業と比してDNA収量を減少させることなくのDNA抽出時間を大幅に短縮することが可能となった。 次いで,うがい液に含まれる体細胞とEBウイルス(EBV)コピー数を定量的に検出するために,体細胞数1個あたり2コピー存在するbcl-2と,EBVのWとBNRF-1領域のシークエンスを利用したプライマーとプローブを作成し,Taqman PCRによるReal-Time PCRの系を整えた。bcl-2,EBV W, EBV BNRF-1のプライマーからPCRとTAクローニングよりプラスミドを作成し,この希釈系をReal-Time PCRのstandardに用いることで精度の高い定量測定系を確立した。 健常ボランティア33名,口蓋扁桃摘出症例47例を対象に経時的に計582のうがい液を採取し,年齢,扁桃疾患の等の臨床データ別に解析した。今回の検討では,臨床データや血中ウイルスとうがい液中のEBV量との有意な相関はみられなかった。 咽頭うがい液を用いた臨床応用として,性感染症の代表的な病原体である淋菌およびクラミジアの口腔咽頭からの検出について530症例を対象に検討した。うがい液と従来からおこなわれている咽頭スワブを同一例から同時に採取し,2つの核酸増幅法を用いて検出した。いずれの検査においてもうがい液が咽頭スワブより陽性検出数が上回っていた。 以上,口腔咽頭からの微生物検出用の検体としてうがい液が有用であることが示された。また,うがいの仕方,摂食前後で収集されるDNA量にばらつきがみられ,経時的に測定する場合はうがい液採取条件が今後の検討課題と考えられた。
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