研究概要 |
花粉症では花粉飛散がない時期にはまったく生じない非特異的な過敏性が飛散季節では亢進してくる。これは気道粘膜上皮には知覚神経終末が存在し、神経刺激がアレルギーを含む気道炎症に関与している可能性が考えられている。実際にサブスタンスP(SP)を中心にした神経ペプチドによって惹起される神経原性炎症によって,喘息では気道過敏性が亢進する。 この気道過敏性を鼻粘膜でも証明しようとした本研究では平成14年はexplant cultureを使用してSPがその分解する酵素とともに好酸球の浸潤を制御している可能性が示された。またvivoの試験で抗原の連続誘発での過敏性亢進が示された。平成15年は粘膜上皮層におけるSPの増加発現機構を知る目的でSP mRNAのリアルタイムPCRの測定系をSPの前駆体であるプレプロタキキニンmRNAのバリアントをすべて検出できるよう設計した。花粉症患者では花粉飛散季節に血清中のSP mRNAが増加する傾向が認められた。また季節前では検出限界以下であった。平成16年度はスギ花粉症患者に対し,花粉非飛散期に抗原誘発を行い,抗原誘発前と誘発10分後に鼻粘膜を擦過し、得られた鼻粘膜上皮層をリアルタイムPCR法によってSP、Neurokinin(NK)-1受容体、Neutral endopeptidase(NEP)、エンドセリンのmRNAを検討し、抗原誘発反応陽性の群ではこれらのmRNAの発現が増加する傾向にあった。誘発反応の陰性群では変化がなかった。 以上の検討から鼻アレルギー反応では抗原特異的反応だけでなく,鼻粘膜表層の神経終末が神経ペプチドを分泌し、抗原非特異的に増強させる役割を果たしている可能性が示された。さらに鼻粘膜局所でのSP mRNAの亢進、タンパク発現とその酵素による制御は局所の過敏性亢進に係わっている可能性が示唆された。
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