研究概要 |
1.正常色覚男子230例の解析により日本人におけるL視色素遺伝子のコドン180,296,M遺伝子のコドン283における多形の頻度などがコーカソイドとは異なることを明らかにした。 2.プロモーターにおける変異(-71A>C)が転写因子との結合の妨げとなり,結果として遺伝子の発現が抑制され色覚異常の原因となる可能性を示した。 3.-71Cの頻度の人種差を調べた結果,日本人:56/230(24.3%),中国人:19/98(19.4%),タイ人:8/104(7.7%),白人:1/50(2%),黒人:0/14(0%)であり,人種により相違があることを明らかにした。 4.先頭の遺伝子,後続の遺伝子,最後尾の遺伝子を別々にPCRし,その産物を解析することにより保因者の診断が可能であった。正常色覚女性117例中11例が保因者と判断された。 5.3年間で514の色覚異常例を解析した。その中で男子の解析例数463の内訳はP69,PA62,D152,DA167,PCD13例であった。 6.P69例の遺伝子型は,P型53,PA型11,正常型3,確定不能2,PA62例は,P型4,PA型50,正常型4,確定不能2,逆正常型(M-L)2,D152例は,D型128,DA型4,正常型7,確定不能13,DA167例は,DA型106,D型14,正常型26,確定不能21,PCDの13例は全例が正常遺伝子型で-71Cを持っていた。臨床型と遺伝子型の不一致例88のうち53例は-71C,あるいはAsn94Lys,Gly338Glu,Cys203Arg,Pro231Leuなどのアミノ酸置換やエキソン5の2塩基欠失で説明がつくものであった。 7.なお説明のつかない不一致例が17例残っている。また表現型は異常3色型(2種類の赤錐体あるいは2種類の緑錐体を持つ)であるが遺伝子型が2色型というケースが18例ある。これらの解明が今後の課題となろう。
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