研究分担者 |
高橋 政代 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80252443)
田辺 康人 科学技術振興事業団, 若手さきがけ, 専任研究者
柏井 聡 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50194717)
本田 孔士 京都大学, 医学研究科, 教授 (90026930)
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研究概要 |
本研究においては,まずラットにおける新しい緑内障モデルの開発のために,ラット隅角,線維柱帯に対する遺伝子導入を試みた.遺伝子導入ベクターとして安全,簡便な非ウイルスベクターで他の組織で良好な導入効率の報告されているHVJ envelopベクターを採用した.遺伝子発現期間を持続しうるEB virus replication orignをバックボーンにもち,CMVプロモーター下にreporter geneを組み込んだプラスミドDNAをHVJ envelopに封入し,成熟ラットの前房へ注入した.投与後4週間の経過中,有意な遺伝子発現は認められず,HVJ envelopベクターを用いた遺伝子導入による緑内障モデルの作製は困難であると考えられた.再現性がよく緑内障の病態をよく反映したモデルラットを作製するため,過去に報告のあるモデルも含めて数種の緑内障モデルラットを作製した.その中で上強膜静脈結さつモデルは眼組織への手術侵襲がほとんどなく,安定した長期眼圧上昇を認めた.上強膜静脈結さつモデルではすでに処置後10週で軽度,網膜神経節細胞(RGC)の減少が認められ,12週では約30%のRGCの減少を認めた.30週では更にRGCの減少が認められ,視神経乳頭陥凹の拡大も認められた.RGC,視神経乳頭部での変化に比較して,網膜の他の層には明らかな変化は認められず、唯一ミュラー細胞において細胞の活性化を示す特異抗原の発現亢進が認められた.眼圧上昇後早期の変化としては、網膜における変化に先行して,処置後3日において視神経内アストロサイトにおけるcaspase3の発現亢進が認められ、1週でアストロサイトの減少が認められた.BrdUのとりこみは処置後2週で明らかな増加をみとめたが,2ヶ月では減少しており,アストロサイトの数も減少していた.有意にRGCの減少を認める眼圧上昇後12週のモデルラットの視神経を用いたマイクロアレイによる解析では,細胞外基質,細胞周期関連分子,細胞接着因子などで発現の増減が認められた.今後,他の視神経障害モデルとの比較および遺伝子発現の経時変化の検討により,緑内障性視神経障害因子の解析をすすめていく予定である.
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