研究分担者 |
佐藤 拓一 東北大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (10303132)
藤井 規孝 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (90313527)
大島 邦子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (80213693)
前田 健康 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40183941)
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研究概要 |
1.歯牙再植後の歯髄再生過程におけるHsp25と抗原提示細胞の相互的役割 再植歯髄のHsp25発現をみると,血行の遮断により,象牙芽細胞は再植後1日でHsp25発現を失うが,血行が回復する再植後5日までに,Hsp25強陽性の細胞が歯髄・象牙質界面に配列し,その後多量の象牙質形成を認めた.以上より,Hsp25強陽性を示す象牙芽細胞の変性は,細胞外へのHsp25タンパク質の流出を引き起こし,抗原提示細胞の遊走を含む迅速な炎症が惹起されることが明らかになった. 2.窩洞形成後の歯髄再生過程におけるHsp25と抗原提示細胞の相互的役割 窩洞形成により傷害を受けた象牙芽細胞はHsp25免疫陽性を持続していたが,12時間後までに歯髄・象牙境のHsp25免疫反応は消失した.しかしながら,傷害を受けた部位の歯髄・象牙境から離れている部位では,明らかな細胞突起をもたない円形の細胞がHsp25免疫陽性を維持していた.この陽性細胞の存在は細胞極性が失われているものの窩洞形成後にも象牙芽細胞が生存していることを意味すると思われ,72時間後には,新しく分化した象牙芽細胞が歯髄・象牙境に配列し,Hsp25免疫陽性を示した.歯科用レーザーによる窩洞形成では,歯髄・象牙質界面に好中球浸潤と腫瘍形成が惹起され歯髄の治癒が遅延することが明らかとなった. 以上の結果より,象牙芽細胞における高濃度のHsp25タンパク質は,象牙芽細胞の破壊後に迅速な抗原提示細胞の遊走を促し,再生象牙芽細胞の分化を含む歯髄の治癒に重要な役割を担っていると推測できる.また,レーザーによる窩洞形成では窩洞面にスメアー・レイヤーが形成されないことが明らかになっており,口腔内からの細菌侵入により歯髄内に腫瘍形成が惹起され,タービンによる窩洞形成と異なる結果が得られた.
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