研究概要 |
研究実績の概要 本研究では成人性歯周炎の主要な起炎菌であるPorphyromonas gingivalis由来LPS (lipopolysaccharide)に対する口腔粘膜上皮細胞の応答反応とその機構について以下の検討を行い成果を得た. 1.LPS細胞膜レセプターの検討:マウス歯肉溝上皮株化細胞(G E細胞)でのLPSレセプター(CD14,Toll-like receptor (TLR)2,TLR4)遺伝子発現とそれぞれのタンパク質発現をRT-PCR,および,免疫組織染色,フローサイトメーター,ECLウエスタンブロットで検討した.その結果,TLR4遺伝子発現はP.gingivalis LPS添加により増加することを認めたが,CD14,TLR2 mRNA発現量では変化が見られなかった.レセプター特異的抗体を用いた免疫組織染色とフローサイトメーターによる検索から,弱いながらもこれらの細胞表面レセプター発現の可能性を認めた.一方,ECLウエスタンブロットの結果からは,G E細胞ではCD14の発現量はマクロファージ系細胞と同等であるが,TLR2,4の発現量が明らかに低い可能性が示された. 2.LPS刺激により誘導される歯肉上皮細胞応答の解析:P.gingivalis LPS刺激により,G E細胞の増殖活性が増大した.また,TNFα,IL-1β,IL-6等の炎症性サイトカイン,およびIL-8,macrophage inflammatory protein 2等のケモカインの発現量もLPS刺激により変動する可能性が示された.これらの応答反応の惹起時にはThrやTyrリン酸化の程度が上昇するタンパク質の存在を2次元電気泳動で認めた. 以上の結果より,歯肉溝上皮細胞ではLPSによりサイトカインの産生や増殖活性の上昇等の応答が起こるが,LPSレセプターはマクロファージで報告のあるレセプター系とは異なる可能性が示唆された.
|