研究概要 |
歯周疾患をはじめとする口腔感染症において粘膜免疫系は重要な宿主防御機構として働くことが予想されるが,老化にともなう変動については依然不明な点が数多く残されている.そこで,老化促進マウス(SAMマウス)系あるいは老化マウスを用いて検討し,以下の成績を得た. 1.老化徴候を示すSAM-PマウスB細胞のマイトジェン活性は対照のSAM-RマウスB細胞比較して有意に低かった. 2.PgLPS刺激後の多クローン性B細胞活性化反応も,マイトジェン活性同様,SAM-PマウスB細胞でその反応性が有意に低下していた.しかし,多クローン性B細胞活性化反応の低下が現れる月齢は,マイトジェン活性の低下発現の月齢とが若干異なっていた. 3.コレラトキシンをアジュバントにした口腔免疫系(粘膜免疫系)の成績からは,老化マウスの実効組織(消化管粘膜固有層およびパイエル板)で,全身免疫系(脾臓)と同様に,老化にともなう反応性の低下が観察された. 4.しかし,12ヶ月齢,24ヶ月齢の老化マウスでの反応性の比較検討から,粘膜免疫系での老化にともなう反応性の低下は,全身免疫系とくらべて,比較的早期に認められる可能性が示唆された. 5.老化マウスのT細胞について検討した結果,細胞レベルでの反応性(マイトジェン活性)の低下は認められなかったが,T細胞ポピュレーションの変動,特に胸腺外分化T細胞率の上昇が観察された. 以上の成績より,宿主防御機構としての免疫系では,老化にともないB細胞では個々の細胞レベルでの反応性の低下,T細胞では細胞ポピュレーションの変動が惹起されていることが明らかとなった.これら免疫担当細胞の老化にともなう細胞レベルでの変動および細胞のポピュレーションの変動が結果として,粘膜免疫系の実効組織での老化にともなう反応性の低下につながっていることが強く示唆された.
|