研究概要 |
口腔粘膜扁平苔癬は原因が明らかでなく,効果的な治療法も開発されておらず,対症療法が試みられるのみである.本病変に特徴的なT細胞の帯状浸潤,Killer T細胞が上皮基底層を病変成立に重要な因子であるが、そのメカニズムは明らかにされていない.われわれは口腔扁平苔癬のモデルマウスを開発し,病巣形成メカニズム解明を目的とし,治療法開発につながる基礎的研究を計画した。 平成14年度には、初期病巣の成立に、IL-2およびINF-γの発現が必要であること、病変成立初期において、病巣部のIL-2の発現は2相性を示すこと、NK cell(asialo GM1陽性)がTh1のクローナル増殖に先行して浸潤し、かつ続いておこる細胞浸潤を調節していることなどを明らかにした。さらに、完成されたヒト病巣では,上皮内dendritic cell (DC)の高度浸潤がみられることから,粘膜上皮とDCの病変進行における役割を明らかにすることが病変の理解と治療法の開発に不可欠であると考え、prostagrandin E2産生の律速酵素であるcyclooxigenase-2の病巣部における発現を指標として検討した。平成15年度にはヒト扁平苔癬では潰瘍・糜爛型の病変部上皮細胞にはcyclooxigenase-2の発現は認められず、病変部の上皮細胞が肥厚するとcyclooxigenase-2およびphospholipase A2発現が著しいことがわかった。また、上皮下の血管内皮細胞、マクロファージなどの細胞で強発現していることなどを明らかにした。扁平苔癬において上皮は、killer T cellにより一方的に破壊されるのではなく、上皮細胞の再生をうながし、上皮が生体防御機構の一部として肥厚することが、病変の複雑な臨床像を形成しているのではないかと考えられた。上皮細胞におけるcyclooxigenase-2を始めとするのprostagrandin E2産生の律速酵素の発現は、DCやCD4細胞の産生する、サイトカイン、ケモカインが調節していると考えられる。本研究成果をふまえ、上皮細胞株を利用してこれらpro-inflammatory agentsによるprostagrandin E2産生の律速酵素の増強を抑制することによる治療の可能性を検討してゆく.
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