研究概要 |
舌下腺および顎下腺の加齢に伴う組織構造の経時的変化について組織化学的および微細構造学的な観察を行った。動物はWistar系ラット雄を用い、生後12ヶ月から生後27ヶ月までの試料を採取した。材料採取時には剖検と血液生化学的検査を行い、材料として用いた実験動物の指標とした。切片は、H-E染色、アルシアンブルー(AB)染色およびPAS(過ヨウ素酸シッフ)反応、トルイジンブルー染色を行い、形態変化および粘液細胞と漿液細胞における分泌物質の性状を組織化学的に検討した.老化指標としてコンゴーレッド染色を施し,アミロイド蛋白の出現の時期および部位について光顕,偏光観察を行った。それに加えて過マンガン酸法によりアミロイド蛋白の鑑別を行った.加齢に伴う細胞死の発現時期および経時的変化の検討にはTUNEL法を用いた.電顕観察では、形態観察の他、加齢に伴い漿液細胞が産生する分泌顆粒に含まれるタンパク質の性状変化を調べる目的でプロナーゼ消化法を行った。上記観察期間を通じて、体重100gあたりの舌下腺の重量は、顎下腺に比べて月齢とともに減少傾向を示していた。コンゴーレッド染色では、生後24ヶ月以降の舌下腺小葉間結合組織の血管や導管周囲および腺房細胞間の結合組織でアミロイド蛋白の沈着が認められたが、顎下腺については明瞭な所見は得られなかった。TUNEL法による陽性細胞の検出では、生後27ヶ月の舌下腺の粘液細胞において、TUNEL陽性細胞を認めた。電顕観察におけるプロナーゼ消化法では、舌下腺の漿液細胞が産生する分泌顆粒に含まれるタンパク質は加齢とともに性状が変化している様子が観察された。これらのことからラット舌下腺は、顎下腺に比べて腺組織の萎縮が生じ易く、萎縮の進行とともに小葉間結合組織の血管や導管周囲および腺房細胞間にアミロイド蛋白が沈着し易いこと、さらには一連の経過を通して産生する唾液の性状を変化させながら老化が進んでいくことを示唆しているものと考えている。
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