研究概要 |
Prevotella属は口腔内の歯周病原性をもつ細菌の中で最も分離頻度が高いにも関わらず,病原性の解明が進んでいない。研究課題のPrevotella属の歯周病病原因子として,赤血球凝集因子,赤血球溶血因子,ヘミン結合蛋白およびホスファターゼの遺伝子に着目し,塩基配列,制御機構の解明を目的とした。 赤血球凝集因子遺伝子の解析は,P.intermediaのphg遺伝子をPCRで増幅し、種々の大腸菌に組み込み,GST融合タンパクとして遺伝子の発現を試みた。しかし封入体を作り,凝集活性を示す蛋白質として単離することが出来ず,引き続き条件検討が必要である。このphg遺伝子を基にPrevotella属に類似の遺伝子配列があるかどうかを検索したが,類似の遺伝子は見つからなかった。 赤血球溶血因子遺伝子はBeemらがP.intermedia 27株からクローニングし報告している。この遺伝子が種々のPrevotella属に存在するかを検討したが,極めて特殊な菌株にしか存在しないことを見出し,報告した。TIGR(The Institute for Genomic Research)のP.intermedia 27株の全遺伝子解析プロジェクトの報告の中に,P.melaninogenicaの溶血遺伝子と類似の構造を見つけ,この遺伝子の組み込み体を作成し,溶血活性を発現することを見つけた。この遺伝子はP.nigrescensには存在しなかった。さらにP.intermedia分離株での遺伝子多型を調べ,溶血活性との関連を引き続き検討している。 Prevotellaの産生する病原因子,ホスファターゼ,およびP.gingivalisの産生するジンジパインに対し,緑茶成分であるカテキン類が抑制効果を示すことを見い出し,論文に発表した。また,中国における口腔内Prevotella属の疫学的調査を首都医科大学北京口腔医院と共同で研究し,P.intermediaとP.nigrescensが異なる分布様式を示すことを論文に発表した。
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