研究概要 |
破骨細胞形成に関与する分子を明らかにする目的で、DNAイクロアレイの方法を用い、RANKL+M-CSF刺激で発現上昇してくるmRNAを調べたところ、アネキシン2,4,5が有意に上昇していた。確かに破骨細胞に、これらが蛋白として発現しているかを調べるため、特異抗体を用いて免疫染色を行った。アネキシン2,4,5全て単核破骨細胞にも多核破骨細胞にも存在し細胞全体に広く染色された。アネキシンの発現はM-CSF単独添加の場合でも認められ、特に破骨細胞特異的に発現しているわけではなかった。ある種の細胞ではアネキシンが細胞膜上の脂質ラフトに存在することが報告されている。破骨細胞における局在を調べるため、破骨細胞を1% Triton X-100で可溶化し、ショ糖密度勾配遠心法で分画を行った後、特異抗体でウェスタンブロッティングを行った。アネキシン2と4はTriton不溶性の軽い画分には存在せず、破骨細胞においてはラフト以外のところに局在したが、一方、RANKやc-Src, TRAF2,6などはラフトに局在した。ラフトを構成するスフィンゴ糖脂質の合成阻害剤D-PDMPを添加すると、RANKやc-Srcはラフトに局在できなくなり、それに伴い破骨細胞形成が顕著に抑制されたのに対し、ラフトに局在しないc-Fmsやアネキシンの局在は変化しなかった。外からスフィンゴ糖脂質を細胞培養に加えると、RANKやc-Srcはラフトに局在するようになり、それに伴い破骨細胞形成も回復するが、これらは脂質ラフトの形成が回復したためと思われる。成熟破骨細胞において特にRANKL/RANKを介したシグナル伝達は細胞膜上のラフトと呼ばれるミクロドメインで行われていることが本研究で明らかになったが、アネキシンは脂質ラフト以外のところに局在して何らかの機能を果たしていることが示唆された。
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