研究概要 |
本研究では、細胞骨格を構成する蛋白質およびそれらの発現を制御している分子の動態について解明することを目的とし、破骨細胞および頭蓋冠を共焦点レーザー顕微鏡で観察することにより以下の新知見を得た。 1.運動性が高く、融合を行っている破骨細胞では細胞膜および細胞突起にosteopntin(OPN)とCD44およびβ3 integrinの共局在が観察され、これらの染色像はF-actinと一致していた。 2.蛋白合成阻害剤であるcycloheximideで処理後3時間経過した破骨細胞においても細胞内にOPNとCD44の染色が観察され、細胞膜内に停留するOPNの存在が確認された。 3.ガラスやプラスチック上で形成された破骨細胞ではアクチンリング形成が確認されたが、免疫染色によりOPNを観察することはできなかった。一方、骨吸収促進因子存在下で培養した頭蓋冠では吸収窩の辺縁部にOPNの強い染色が認められ、アクチンリングおよびβ3 integrinとの共局在がみられた。 4.OPN-/-マウスおよびCD44-/-マウスから採取したmonocyteでは破骨細胞誘導能および骨吸収活性が顕著に低下していた。 5.生細胞のタイムラプス画像から、骨粗鬆症治療薬であるbisphosphonate(BP)添加群では突起伸長と細胞膜ラッフリングの連携が損なわれ、β3 integrin,Cdc42,Rac,OPN,CD44の産生および細胞膜直下への局在の抑制されることが観察された。 6.BP添加群では、細胞質からlamellipodiaへのRacの移行が認められず、さらにRacおよびc-Srcのリン酸化が顕著に抑制された。 以上の結果から破骨細胞形成および骨吸収過程で重要である細胞骨格構築においては、β3 integrin, Cdc42,Rac,OPN,CD44などの細胞内情報伝達に関わる分子群が相互作用する必要性が示唆された。
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