研究概要 |
前年度に得られた女性200名のデータベースを基にして,骨粗鬆症患者スクリーニングの自動支援システムの開発を行った.従来我々が視覚的に分類してきたパノラマX線写真上の下顎骨下縁皮質骨の形態分類(正常,軽度〜中等度粗鬆化,及び高度粗鬆化)を,数理形態学の手法を用いて,粗鬆化している皮質骨の断片の長さと数の成分を客観的に数値化し,3つの形態分類を客観的数値に置き換えることに成功した.この数値と,予め得られている全身骨の骨密度の値を,統計学的手法を用いて,最大の正確度を持つように適合させて,100名の女性のデータにおいてシステムの開発を行った.このシステムを用いて,他の100名の女性のパノラマX線写真を自動解析したところ,腰椎骨密度を基準とした場合,感度73.8%,特異度68.6%,陽性尤度2.35となった.大腿骨骨密度を基準とした場合は,感度66.2%,特異度56.7%,陽性尤度1.53となった(2004年国際歯科研究学会にて報告予定).これらの結果は,一般開業医に施行してもらった視覚的評価の結果(2003年国際骨粗鬆症財団雑誌に掲載)をはるかにしのぐものとなった.また近年,医科の領域で用いられている質問表をベースとした骨粗鬆症患者スクリーニング法よりも有益であることが証明された(2003年米国骨代謝学会にて報告). 本研究に付随して,パノラマX線写真で見られる下顎骨皮質骨の粗鬆化が何を意味するかについて,骨代謝回転との関係を検討したところ,下顎骨皮質骨の粗鬆化は,高骨代謝回転を示唆していることを突き止めた(2003年米国骨代謝学会雑誌掲載).以上の研究結果を考慮すると,我々が本研究により作成した自動スクリーニングシステムにより,低骨密度で高骨代謝回転を有する女性,即ち,骨粗鬆症高リスクの女性を,自動スクリーニングシステムにより高率にスクリーニングしうる可能性が示された.
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