研究概要 |
X線画像はセンサーに投影された2次元情報であるが,異なる投影方向による画像群から3次元的に観察し位置関係を診ることができる。そこで歯と顎骨の画像の立体化,3次元的な表現と計測に関する研究を行った。ステレオグラフィーとTACT (Tuned-Aperture Computed Tomography)は,口内法X線写真の立体化の方法として,手軽,低線量,負担のかかる計算がないなどの利点がある。また断面像をインタラクティブに操作して任意断面を観察できる魅力もある。そこで「3次元的な物体を正確に表示するのは3次元的な表示装置」という考え方から,3D裸眼立体ディスプレイを応用して,ステレオグラフィーの視覚的な表現を豊かにし,計測を容易にするシステムを検討した。 歯と顎骨のイメージングでは,局所的な病変の描出に対応する3次元的な描出が求められるので,X線CT画像も含めてステレオグラフィーを応用した。3D裸眼立体ディスプレイ4D-15TM (4D-Vision & Trade,独)とバーチャルカーソルで,ステレオディスプレイプロセッサーによるステレオグラフィーシステムを構築して,立体認識とdepth descriptionの再現性の検証を引き続き行った。また,TACTの擬似ホログラム技術を3Dディスプレイとの組合せで有用性を検討した。 最初に行ったTACTの臨床応用では上顎前歯部の埋伏歯の位置・隣接歯との関係の描出を評価した。任意断面を観察することが,埋伏歯の処置に関する診断・処置方針を的確に行うことにおいて臨床的有用性があった。さらに同じ被写体モデルに対しTACTとCTによる撮影と同時に行い3次元的depth perceptionを比較した。またコーンビーム型CTにおける3D画像の描出能と歪みを調べた。またCTの3Dデータをaviファイル形式にして,3D表示を行った。そして3Dバーチャルカーソルによって強調される被写体深度を指摘する精度の向上について引き続き検討した。歯牙とその周囲組織としての顎骨の局所的病変の3次元的把握が容易に行える条件と,その臨床的有用性を評価できた。
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