研究概要 |
細胞内情報伝達系の異なるドパミンD1-様アゴニストと受容体欠損マウスを用いて,D1-様:D2-様受容体相互作用の観点からD1-様受容体機能について検討を加えた。新規のマウス顎運動観察法により,同時に各種の顎顔面領域の運動を記録した。その結果,アデニレートシクラーゼ(AC)とフォスフォリパーゼC(PLC)活性化作用を有するD1-様アゴニストSKF38393,SKF82958でもPLC活性化作用のみ示すSKF83959も,ほとんど同様のトポグラフィーを示したが,水平的顎運動(Jh)には影響を及ぼさなかった。しかし,SKF82958はJh発現は抑制するという特殊な作用を示した。また,D2-様アゴニストは顎運動に抑制的に作用し,頭部と感覚毛の運動には促進的に作用し,併用したところD1-様アゴニストの主要な顎運動を抑制した。しかし,SKF82958ではことなる相互作用を示し,やはり,この薬物の特殊性が示唆された。D2ノックアウトマウスを用いた研究からはD2受容体はD1受容体機能とは独立に垂直的顎運動を抑制的に制御していることが示唆された。また,D2ノックアウトマウスではA68930,SKF83959のトポグラフィーがおおむね同様であったことから,AC連関型,PLC連関型D1-様受容体はいすれもD2受容体に関連性をもたず,独立に機能を発揮することが示唆された。しかし,舌の突出運動に関しては,D2受容体はAC共役型またはPLC共役型D1-様受容体と協調的な相互作用を有していることが示唆された。また,D3受容体は少なくともPLC連関型D1受容体と相互作用を有しないことも示唆された。
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