研究概要 |
近年,臨床術式を簡便化した接着システムが数多く使用されており、各種接着システム中には、発がん性やアレルギーの問題となっているHEMAが水とモノマーの相溶性向上とモノマーの歯質浸透性向上のために配合されているのが多い。そこで,本研究では,これらの2点を考慮し,市販化されているセルフエッチングシステムの基礎的知見の集積およびHEMAフリー接着システム開発の検討を行った。健全ヒト抜去歯臼歯を歯軸に垂直に切断した後,歯冠中央部の平坦象牙質を#600の耐水研磨紙にて60秒研磨した。その被着象牙質面に3種類の市販セルフエッチングシステムUnifil Bond(UB,ジーシー),Clearfil Linerbond II(CL II,クラレ),Clearfil Mega Bond(CMB,クラレ)を用いてメーカーの指示通り接着操作を行い,象牙質接着性を形態学的に評価した。また、Clearfil Mega Bond (CMB、クラレ)、One up Bond F(OBF、トクヤマ)、HEMAフリーのセルフエッチングシステム(試作、GC)の3種類において、マイクロテンサイル接着試験を行い、接着強さを検討した。その結果,UB, CL II, CMBは,いずれも象牙質との接着界面で厚さ0.5〜1μmの非常に薄いハイブリッド層が形成されていることが明らかとなった。接着試験において、CMBと試作セルフエッチングシステムには有意差が認められなかったが、OBFと試作では有意差が認められた。そこで、さらにサーモストレスや繰り返し負荷を与えるなど接着耐久性を含め、総合的に考察を加える必要があると思われる。また、現時点において、適切な機能性モノマーやポリマーを選択することによりHEMAフリー接着システムの開発および実用化が可能であることが示唆された。
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