研究概要 |
歯髄細胞中には多くの未分化間葉細胞が存在し,種々の刺激によってこれらの細胞が硬組織形成を有する細胞に分化すると言われている。このことから歯髄組織は本来硬組織を形成する細胞に誘導される機能を有していることが認められる。本研究では,この分化転換と再プログラム化を応用し,硬組織形成能を有する細胞に分化するメカニズムとそれを誘導する因子の検索を行い,臨床に応用することを目的としている。本研究に充分な理解を示した患者の第三大臼歯から歯髄を取り出し,out growthさせ,6〜9代培養したものを歯髄細胞とした。 5-アザシチジンで脱メチル化を行った細胞と行っていない細胞に50μMアスコルビン酸(AA),10mM β-glycerophosphate(β-GP),100nMデキサメタゾン(DEX)を加えると脱メチル化をした細胞の方がALP活性が強くなる傾向を示し、1mM 5-アザシチジンで1日間脱メチル化をした細胞に石灰化環境を与えた条件が石灰化環境を与えない条件との差が最も多く示した。また、脱メチル化した細胞の再プログラム化の指標として、石灰化機構に関わる因子であるBMPおよびIGFsのmRNA発現について、検討を行った。脱メチル化をした細胞に50μM AA,10mM β-GP,100nM DEXを添加することによって、2時間後から48時間後にかけて、BMP-2,4,6のmRNA、48時間から72時間にかけてIGF-1およびIGF binding protein-5のmRNAの発現が上昇した。また、cDNAアレイを用いて、石灰化への環境で刺激することにより多くの遺伝子の発現を認めた。以上の結果から、5-アザシチジンによる脱メチル化によって、分化転換が起こり、その細胞に環境を整えることにより、再プログラム化が可能であることが示唆され、臨床応用への期待できる。
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