研究概要 |
本研究は臨床的に慢性根尖性歯周炎の症例の根尖部表面の歯石様付着物から外科処置時に試料採取,もしくは外科処置を行わない場合にはフィステルよりファイバースコープ観察下で試料採取を行った。 歯根表面の付着物は一部グラム染色を行い,他はPCR検索,嫌気性培養を行った。外科処置時に根尖を切断した症例についてはSEMによる観察を合わせて行い,細菌と歯根表面に存在する歯石様付着物の関連性について検討を行った。 現在得られている結果は以下の通りである。 1.ファイバースコープにてフィステルを有した症例の病巣内の歯根表面を観察した結果,27症例中21症例の根尖部歯根表面に歯石様の付着物が認められた。 2.採取した歯石様付着物の試料を粉砕,スライドグラス上にスメアし,グラム染色を施し,光学顕微鏡観察下でグラム陽性を示す細菌が採取試料の無構造な組織中に認められた。 3.外科処置時に採取した歯石様付着物が歯根表面に存在した根尖部をSEMにて観察したところ,バイオフィルム状になった細菌塊が認められた。 4.採取した嫌気性培養を行ったところグラム陽性球菌,桿菌そして,グラム陰性桿菌が分離された。 以上の結果から,慢性根尖性歯周炎の症例の根尖部表面の歯石様付着物は細菌を含んだ石灰化物であることが示された,根尖孔外に存在する細菌は難治性根尖性歯周炎の原因と認識されている,本研究の結果は歯石様に石灰化した菌塊に対しては外科的に除去を試みる必要性も示唆されていると思われる。
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