研究分担者 |
戸塚 靖則 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (00109456)
佐藤 華織 北海道大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (40281828)
小松 孝雪 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (90271668)
箕輪 和行 北海道大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (30209845)
井上 農夫男 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (20091415)
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研究概要 |
本研究の目的は,顎関節症の筋症状に対して理学療法およびスプリント療法が有効か否かの科学的根拠を咬筋の組織血流状態解析の観点から明らかにすることである. 1.方法 咬筋組織血流量の測定には,3波長型近赤外分光血流計を用い,酸素飽和度(StO2),総ヘモグロビン量,オキシヘモグロビン量,デオキシヘモグロビン量を解析した.理学療法は,20分間の温罨法および30分間の低周波療法(マイオモニター)とし,被験者は,顎口腔系に異常が認められない健常者とした.スプリント療法の被験者は,筋症状を有する顎関節症患者とし,スタビリゼーションスプリントを用いた. 2.結果および考察 1)理学療法 温罨法では,温め後において,StO2,総ヘモグロビン量,オキシヘモグロビン量に有意な増加が認められた.一方,デオキシヘモグロビン量では有意な変化は認められなかった.マイオモニター後においては,何れの測定項目に関しても有意な変化は認められなかった.これらの結果から,温罨法が深部筋組織の血流に影響を及ぼすことが明らかになり,しかもその効果としては,単なる血流量の増加だけではなく,StO2改善の効果もあることが示された.マイオモニターでは,電気刺激により筋緊張を緩和する作用のほかに,咀嚼筋の不随意的な反復収縮による血行の増大効果があるとする考えもあるが,今回の結果からは明らかな血流の改善を示すデータは得られなかった. 2)スプリント療法 安静時では,スプリント装着時の方が,スプリント非装着時よりもStO2は高かった.クレンチング中,クレンチング後のいずれにおいてもスプリント装着時の方が,スプリント非装着時よりも総ヘモグロビン量は大きかった.咬筋組織血流状態は短期的には,スプリントにより影響を受けることが示されたが,継続使用の場合の影響について今後さらなる研究が必要と考えられた.
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