研究概要 |
被験者群の(1)神経行動学的能力(厚生労働省編-般職業適正検査より,手指手腕の巧緻性・運動協応能力),(2)日常生活に対するQOL(WHO/QOL 2 6),(3)課題(無拘束,各種音信号に合わせた下顎タッピング運動時{1.3Hz,0.3Hz,ランダム})遂行時の緊張度(手掌の精神性発汗量,脈拍数),開口量と「予測の利用」を関連づけ,加齢による咀嚼運動系運動調節の戦略の解析を計画した. 1.被験者は,青年有歯顎群(平均24.9歳,13名),高齢有歯顎群(74.9歳,4名{開口量・発汗量脈・拍数については69.0歳2名}),高齢総義歯群(74.9歳,4名)であった. 2.高齢有歯顎群は,実際には,青年群に比較して身体能力にはかなりの衰えがみられるものの,自分に対する身体的満足度は高く,心理的にも落ち着いているようである.開口量においては,青年群で課題の種類毎にその平均値に差がみられるが,高齢者群で課題の種類毎の平均値にそれほど差がみられず,かつ,バラツキが大きい傾向にある.これにより,青年群では初期学習を終えた後,各課題運動遂行の戦略が決まってしまい,最後まで,ほぼ同じやり方で運動を遂行していていたのに対し,高齢者群では,どの課題でも個々のタッピングのフィードバック情報に基づき,戦略の見直しをしながら課題運動を遂行していたことが推測される,また,高齢者群で,脈拍数のバラツキが大きかったことより,緊張度も高かったことが推測される.手掌発汗量においては,青年群においてランダムにおける継時的漸減傾向は,他の定頻度課題とは違った課題遂行の戦略に習熟し,戦略が効率的に変化したことの現れであり,両高齢者群では,もともとランダムにおいても他課題とあまり変わらない戦略を使用していた為,継時的変化が見られなかったと推測される.
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