研究概要 |
過酸化水素の浸透 35%過酸化水素水を用いるHI LITEの前処理がない場合、1回目の漂白で0.006mM、2回目0.022mMの過酸化水素が測定された。メーカーでは着色が強く通常の操作で漂白効果がでない場合、リン酸エッチングを前処理として行うよう指示している。そこでエッチング後に漂白操作を行った場合、1st stepで0.042mM、2nd stepで0.10mM測定された。なお35%過酸化尿素(Quick Start)で漂白操作を行った場合2nd step後でも0.0075mMであった。 抜去歯に対しての処置で、生活歯とは機序が異なると考えられるが、高硬度の過酸化水素が検出された。 漂白対象歯に充填物がある場合の過酸化水素の歯髄腔への浸透量について調査したGokayらの結果でも、過酸化水素の濃度が高くなるに従って、過酸化水素の量が高くなっている。コンポジットレジンの充填がある場合、その量は優位に増加している。漂白操作を行う場合充填物の存在には最も注意しなければならない根拠である。 過酸化水素の分解 過酸化物を用いた歯牙漂白法には,(1)高濃度(約30-35%)の過酸化水素に光を照射する方法,(2)高濃度の過酸化水素に熱を与える方法と(3)過酸化水素に2価の鉄イオンを混ぜる方法があり,これらの方法では為害性が最も高い活性酸素種のヒドロラジカル(・OH)が発生する。すなわち,(1)では過酸化水素の光分解で,(2)では熱分解反応で・OHが発生する。鉄イオンが混ざると活性酸素が発生するとされている。さらに過酸化水素(H_2O_2)は電気的に中性なので細胞膜に対し大きな透過性を有することである。すなわち細胞に侵入し細胞内の微量金属(赤血球の鉄イオンなど)と反応して細胞機能を障害することが考えられる。また,過酸化水素は露出した象牙細管やセメント細管に入り込み,細胞内で・OHとなってこれらの細胞に障害を与える可能性は高いと考えられる。
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