研究概要 |
平成14,15年の2年間に渡る成果としては,下記の通りである. 我々は,世界で始めて株化に成功したヒト歯肉上皮細胞(HGE)を用い,各種生体材料との生体親和性を細胞生物学的に検討している.この2年間における成果としては, 平成14年度において,SEM所見では培養30分では,資料において細胞はFilopodian, Lamellipodiaを示し細胞の接着が見られたが鏡面研磨チタン(MRT)において最も細胞形態の変化が認められた.培養2時間後では,細胞はさらに上皮特有の多角形を示し形態変化の割合はチタン(CT)よりもファルコン(F)およびMRTに多く見られた.培養24時間では,各資料全てが多角形の上皮細胞により表面全体が被われ,差が認められなかった.TEM所見では培養後24時間では,F, MRT, CTでは,細胞と資料との間に約25nmの二重構造が観察されたが明らかな細胞外基質は認められなかった.培養1週後の所見ではCTにおいて細胞外基質の存在を示すと考えられるamorphousな像が観察された.また,MRTでは,境界は細胞のみで二重構造は観察されず,資料面に細胞外基質を示すと考えられる構造物が認められた.今回の実験からヘミデスモゾームは観察されなかったが,ヒト歯肉上皮細胞を用いたin vitroの結果からMRTが最も適した材料ではないかと考察された. 平成15年度は,他細胞での比較を行うため,Human Normal Osteoblast Cells(HNOB)を使用して検討した.その結果,SEM所見では培養30分では,資料において細胞はFilopodian, Lamellipodiaを示し細胞の接着が見られたがMRTにおいて最も細胞形態の変化が認められた.培養2時間後では,細胞はさらに上皮特有の多角形を示し形態変化の割合は各種材料において差が認められなかった.しかしながら,培養1時間では,HTTにおいて,F, CT, MRTと比較して明らかに細胞が細胞塊周囲において細長く進展し,盛んに増殖している像がSEMおよび光学顕微鏡にて認められた.この傾向は,培養時間が増すにつれて増大した.材料学的な差はCaイオンの存在の有無であるが,骨細胞においてはCaイオンの存在が重要であり,上皮細胞と明らかに異なった反応を示した.本実験から細胞の種類によって反応がことなる事が理解され,ヒト上皮細胞の科学的修飾に一つの示唆を与えるものであると理解され,今後これらの結果を踏まえ実験を行う予定である.
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