研究概要 |
齲蝕や外傷により根管処置された歯は,支台築造後,歯冠修復され機能と審美性の回復が行われる.本研究は,既製ポストであるファイバーポストの物性および支台築造における有効性を検討することを目的とした. 14年度は,ファイバーポストを曲げ試験に供し,比例限,曲げ弾性係数を測定した.その結果,ファイバーポストは金属製既製ポストと同等の強度があるが,弾性があり,柔軟性を有する材料であることが分かった. 15年度は,さらに臨床を模しての模型実験を行った.試料は80本のウシ下顎前歯をCelay system(Mikrona)を使用してヒト上顎右側中切歯歯根形態に倣い加工を行い,同一寸法に製作し,根管処置後,各種支台築造を行った.支台築造はレジン支台築造(R),金属製既製ポスト併用レジン支台築造(MR),ファイバーポスト併用レジン支台築造(FR),金属鋳造支台築造(M)の4条件で,さらに同一形態の支台歯形成を行い,間接法で全部鋳造冠を製作し,合着した.試料は歯軸に対して45゜静荷重により,破折試験を行い,さらに咀嚼力による影響を知る目的で,同一試料を急速劣化咬合力試験装置により1Hz,250N,300,000回の繰り返し荷重負荷後,同じく破折試験に供した.なお,破折試験により得られた破折強度と破折様相を比較検討した. その結果,静荷重による破折試験でFRが最も高い破折強度を示した.一方,破折様相において,金属製ポストを使用したMR, Mは歯槽骨縁下に破折線が及んでいたが,FRは歯槽骨縁上での破折にとどまった.また,繰り返し荷重後の破折強度において,Rは有意に破折強度が低下したが,FRの破折強度は有意に低下しなかった.したがって,ファイバーポスト併用レジン支台築造は,歯根破折に高い抵抗性を有し,破折を来した際にも歯根部の保存および再修復できる可能性が高いことが示唆された.
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