研究概要 |
本研究は,床義歯に対する何らかの不快症状を待った患者に,義歯の調整,改造,修理などを行い,それらの不快症状を軽減または消失させる処置を行い,その前後の唾液中のストレスホルモンを測定し,不快な義歯とストレスの関連を見出すことである. 講座の医員3名を選び,それぞれ義歯に対して不快症状を訴えて来院した患者6名ずつを割り当てた.同一日の次の時点で唾液の採取(唾液採集容器サリベッティのコットンロールを2分間咀嚼または口腔内に保時した全唾液)を行った.初診時に研究に対する同意を得られた後の問診直後,治療直前,不快症状を除く治療直後および帰院直前.また2回目以降は来院時と治療直後. 1.初診時の唾液中コルチゾール濃度、クロモグラニンA濃度ともに高く,義歯の調整などの治療直後と帰院直前には低く,有意の差が認められた.しかしこれは初めて病院外来に来たという一過性の上昇かも知れず,義歯の不快症状によるものかどうかを分離し得なかった. 2.義歯に対する不満の消失した2回目来院時以降には、コルチゾール濃度、クロモグラニンA濃度はともに初診時より有意に低い値を示した。 3.患者に自宅でリラックス時(ほぼ同時刻に3回)の唾液の採取をさせ、来院時のコルチゾール濃度と比較した結果、義歯の不満を持っていない患者群では、有意差は認められなかった。 以上のことから義歯に対する不快症状は、生体にとってストレスと考えられた。
|