研究分担者 |
寺師 浩人 神戸大学, 医学部附属病院, 助教授 (80217421)
綿谷 早苗 神戸大学, 医学部附属病院, 助手 (50343265)
古森 孝英 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50251294)
尾島 泰公 神戸大学, 医学部附属病院, 医員
梅田 正博 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (60301280)
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研究概要 |
ラットにおける血管柄付き遊離脛骨による下顎再建モデルの作成に成功した.移植長管骨には脛骨を使用し,the saphnous artery osteomusculocutaneous flapとして挙上することに成功した.筋弁としては,gracillis muscleとsemitendnous muscleが複合されている.このcomposite free flap動脈は総頸動脈と端側吻合,静脈は内頸静脈と端端吻合し,人工的に作成した下顎欠損部に移植骨である脛骨をマイクロプレートで固定した.皮弁は頸部に逢着することによりモニターとして使用した.ここまでの挙上方法はMutafら(PRS:1994)の論文を参考に,ほぼ彼らの方法に準じて行った.この挙上された脛骨を下顎に移植する,すなわちラットを使用した血管柄付き遊離骨移植による下顎再建モデルはわれわれ以外に報告がない.現段階での再建成功率は約90%であり,モデルとして充分に使用できるものであると考えている(図1).しかし,このモデルの開発までに2年を要し,当初の計画が大幅に遅延した.この実験モデルを使用し,長管骨を膜性骨に移値した場合,ドナーである長管骨とレシピエントである膜性骨との間に形成される仮骨について,長管骨と膜性骨のどちらの骨形成および骨代謝機構に類似しているか,また全く別の機構が存在しているのかについて形態学的,組織学的および分子生物学的に解析することを目的とした.この実験に先立ち,同一ラット固体を使用した実験モデルにおいて長管骨と膜性骨の骨折治癒機序の相違を,HE染色およびTypeII, TypeXコラーゲンの免疫染色にて検討した.その結果,膜性骨では骨欠損部分の組織像において,(1)骨外側滑膜面では,ごく軽度の骨形成のみ,(2)長管骨で見られるような外骨膜下の血腫の器質化,軟骨形成などの著明な細胞変化は認められなかった.(3)骨修復の初期段階から軟骨形成が認められたが,長管骨形成過程に見られるような軟骨の柱状配列は見られず,骨欠損部に不規則に配列していた.(4)膜性骨(下顎骨)の骨折治癒過程で発現した軟骨組織は,膜性骨では外骨膜での仮骨がほとんどないことより,主に内骨膜膜から形成されていると考えられた.さらに,TypeII, TypeXコラーゲンの発現は摸性骨骨折治癒過程では認められなかったことより,長管骨で見られるような軟骨内骨化とは異なることが示唆された.Osteocalcin, BMP-2/-4,OP-1,TGF-βの発現様式も免疫染色法にて観察中であり血管柄付き長管骨の膜性骨移植モデルと比較検討する予定であるが,血管柄付き長管骨の膜性骨移植モデルの完成が2年にも及び,現在まで結果を得るには至っていない.
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