研究概要 |
本研究の目的は,ヒト舌癌に極めて類似した浸潤様式を示す4NQO発癌モデル,またヒト早期舌癌症例を用いて,癌化移行期の病変を対象とし,より正確な発癌因子を検索することにある。特に,早期浸潤癌部とその周囲上皮性異形成を病理組織学的,遺伝子学的に比較・検討することは,癌化に関与している因子を検索するにあたり有用であると考える。本研究は,病変部位別における各遺伝子蛋白の発現状態および発現様式,遺伝子変異部位と変異スポットを明らかにすることで,口腔癌の早期診断に結び付けていくことを最終目標としている。 現在まで我々は,4NQO発癌モデルを用いた検索から,p53,Bcl-2蛋白陽性,アポトーシス細胞の減少,さらにp53遺伝子変異を認める上皮性異形成は早期浸潤癌の診断がつく可能性が考えられるという結論を得た。また,β-cateninの検索からexon 3領域の変異を伴わないβ-cateninの細胞質,核内での集積が発癌過程の早期である上皮性異形成の段階で関与することが示唆され,ヒト口腔上皮性異形成の癌化能の診断にβ-cateninの細胞質,核内での集積した所見を応用できる可能性が考えられた。以上のことから,本検索法により臨床診断へ応用できるものと考えられ,実際の臨床では切除物断端の癌化能の検索に応用し,有用な結果を得ている。 さらに現在我々は,大学倫理委員会の規定に基づき,ヒト早期癌を対象とした遺伝子学的検索を進めている。方法は早期舌癌切除標本の癌部,上皮性異形成部を対象として,DNAマイクロアレイにより癌化特異的遺伝子の検出を行っている。
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