研究概要 |
1.アミノフィリンのプロポフォール・フェンタニール併用麻酔からの回復促進効果:プロポフォール8mg/kg/時間,フェンタニール3μg/kg/時間で維持された全身麻酔で,麻酔薬投与終了時にアミノフィリンを5mg/kg投与することにより,指示行動,見当識,認識力また呼吸の回復が促進された. 2.アミノフィリンのプロポフォール・亜酸化窒素併用麻酔からの回復促進効果:プロポフォール8mg/kg/時間,亜酸化窒素67%(酸素33%)で維持された全身麻酔で,麻酔薬投与終了時にアミノフィリンを5mg/kg投与することにより,開眼時間が有意に短縮され,指示行動,見当識,認識力,精神運動機能また呼吸の回復が促進された. 3.アミノフィリンのプロポフォール鎮静からの回復促進効果:鎮静状態が,鎮静スコアが5段階評価で3になるように,またBispectal index値が70前後になるようにプロポフォールを30分間持続投与し,プロポフォール投与終了時に,アミノフィリンを5mg/kg投与した.アミノフィリン投与により,精神運動機能,平衡機能,呼吸機能の回復が促進された. 全ての研究で,アミノフィリン投与により,問題となる副作用は認められなかった. 近年ではアデノシン受容体の存在とともに,アデノシンの睡眠への関与が明らかになってきている.全身麻酔薬や鎮静薬には,中枢でのアデノシンの増加が報告されているものもあり,これらの薬剤の催眠・鎮静効果には,アデノシン受容体が関与していることも考えられる.今回の研究の結果は,プロポフォールも同様に中枢でのアデノシンが増加している可能性を示唆している.アデノシン受容体の拮抗薬であるアミノフィリンは,プロポフォールを含め中枢でアデノシンの増加が考えられる薬剤からの回復を促進させることが可能であるため,安全で快適な麻酔からの回復を可能とするアミノフィリンの覚醒促進薬としての臨床的意義は大きいと考えられる.
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