研究概要 |
口腔は多くの外来抗原にさらされることから,癌細胞巣の周囲に多くの炎症性細胞の浸潤が認められる特徴が明らかとなっている。この口腔癌の特徴を活かし,IL-18遺伝子を導入することで,腫瘍胞巣周囲に浸潤したマクロファージを活性化させ持続的なIFN-γの産生を促し,NK細胞による腫瘍細胞融解作用の上昇やFasリガンドの発現増強によるapoptosisの誘導によって殺細胞効果が期待できる.癌胞巣局所にIFN-γ産生をより強力に誘導し,NK活性の増強を図り,より侵襲の少ない新たな治療法の一つとして,口腔癌遺伝子治療の開発を目標としている。IL-18はIFN-γ産生を強力に誘導するサイトカインであり,宿主の腫瘍細胞に対する免疫機構において重要な役割を担っていることが示されている。IL-18遺伝子を用いて腫瘍巣にNKcell,NKT cell,Killer Tcellの積極的な集簇をはかり,それによる抗腫瘍効果について検討を行う事を目標としておこなった。 平成14年度では,前駆体IL-18遺伝子発現ベクターを作製し,マウス扁平上皮癌細胞株PAM212へ導入し高発現株PAM212/pro-IL-18を確立し,in vitroおよびin vivoでの機能解析を行い,導入遺伝子がタンパクを合成分泌することをELISA法で確認した.平成15年度では,さらにcaspase-1(ICE)遺伝子をPAM212/IL-18へ導入し,活性型IL-18蛋白高発現扁平上皮癌細胞株を確立し,タンパクを合成分泌することをELISA法で確認した.ついで,マウス移植実験を行い腫瘍局所での細胞浸潤動態およびリンパ組織での免疫細胞の動態変化について詳細な検討を行った。移植腫瘍の周囲には,小円形細胞浸潤が確認された.しかし,腫瘍縮小効果は期待したほど大きくなく,7日後の縮小率15%,14日後では20%にとどまった.今後投与方法などにつき更なる検討が必要と考えられた.
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