研究概要 |
注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder,ADHD)は,学童期に発症する精神的疾患で,ドパミン(DA)神経の活動変化,特にその調節に重要な役割を担うドパーミンシトランスポーター(DAT)が本疾患の発症に関与すると考えられている。本研究は,DAT発現調節とその修飾がADHDに関連する可能性を追究する目的で,DAT mRNA 3'非翻訳領域(3'-UTR)に着目し,そのDAT機能発現における役割を探索した。 3'-UTRの有無たよるDAT発現動態の変化を比較するためにラットDAT cDNA 3'-UTRを欠失させた種々のcDNAを作成し,COS-7細胞に一過性に発現させた結果,終止コドン近傍まで欠失させると発現量が低下し,輸送活性が減少することが明らかとなった。3'-UTRには繰り返し配列の多型(VNTR)が存在しており,この多型とDAT発現との関係を明らかにする目的で,2-20リピートの種々変異DATを作成し,COS-7細胞に一過性に導入しDAT機能発現を解析した。多型の大半を占める9,10,11リピート間ではDAT発現,機能に差がないことが示された。ヒトDNA並びにヒトcDNAライブラリーを用いて3'-UTRバリアントの解析を行なった結果,21サンプル中2人が9リピートをヘテロで有していた。ヒト脳黒質cDNAライブラリーを用い,3'-RACE法によりDATバリアントを探索したが,報告のあるDAT cDNAのみが得られた。データベースよりDAT遺伝子3'-UTR下流約20Kbを解析した結果,選択的スプライシングを受ける可能性のある複数の領域を見出し,PCR法にて上記ライブラリーを探索したが,目的産物は得られなかった。 以上の結果から,DAT 3'-UTRはその発現,機能に重要な役割を果たしており,その機序は既に我々が報告した同じアミントランスポーターファミリーであるノルエプネフリントランスポーター(NET)の3'-UTRのそれとは異なっていることが示唆された。
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