研究概要 |
近年、日本小児歯科学会が報告した「小児の歯の外傷の実態調査」において幼若永久歯の頻度の高さが浮き彫りになった。外傷により歯髄処置を必要とする幼若永久歯の症例は多い。しかし、完全抜髄および感染根管処置後の失活歯に対する根管充填処置(Apexification)に伴う根尖閉鎖にはその石灰化機構に不明な部分が多い。そこで今回、歯根の形成や根尖閉鎖に大きくも関与する象牙芽細胞層やApexification後の歯根部の骨様硬組織形成に関与する歯根膜組織の石灰化(特に基質小胞性石灰化)に焦点を置き、研究を進めた。基質小胞は軟骨や歯などの硬組織石灰化部位の細胞外基質に存在する小胞であり、初期石灰化に重要な役割を演じるとされている。この小胞は細胞からの発芽により形成されるため、細胞の形質膜由来と思われるアルカリホスフアターゼ(ALP)を高濃度に含む。また小胞の細胞質内に乳酸脱水素酵素(LDH)やProtesaseの存在が報告されている。本研究で我々は、胎生4ヶ月のウシの歯胚から象牙芽細胞層を摘出し、Aliの方法に従い、基質小胞画分を取り出し、ALP, LDH, Proteaseを指標酵素として検索を行った。以下の結果を得た。 1.ALP, LDH, Protesaeを含む基質小胞の外に、密度が高くALP, LDHを含むがproteaseを含まない基質小胞様小胞が存在することを明らかにした 2.基質小胞中のProteaseはAl2+,Zn2+,Fe2+,Co2+を必要とするMetalloproteaseであった。 3.歯根膜組織についても同様の小胞が存在し、詳細に検索中である。
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