研究概要 |
平成14・15年度では坂本の分類(日本矯正歯誌;1958)に基づき4度以上の患者を重度歯根吸収とし、後に矯正治療により歯根吸収が発生した患者3名の保存歯髄線維芽細胞を実験に供した。細胞にSubstance P(SP)を10^<-4>〜10^<-12>Mの濃度で24時間作用させ、prostaglandin(PG)E_2,interleukin(IL)-1β,6,tumor necrosis factor(TNF)-αの産生量を測定した結果、対照群(非吸収群)に比べて歯根吸収群のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αの産生量はそれぞれ経時的および濃度依存的に増加した。 最終年度の平成16年度では歯根膜線維芽細胞について検討を行った。歯根吸収については坂本の分類(日本矯正歯誌;1958)に基づき4度以上の患者を重度歯根吸収とし、後に矯正治療により歯根吸収が発生した患者3名の保存歯根膜線維芽細胞を実験に供した。Yamaguchiらの方法に基づき、細胞に持続的圧縮力を0〜3g/cm^2の加重で24時間作用させ、PGE_2,IL-1β,6,TNF-αの産生量を測定した。さらに、細胞に2g/cm^2の加重で12時間作用させ、得られた培養上清をヒト破骨前駆細胞培養系に添加し、pit formation assayにて破骨細胞形成を観察した。その結果、加重刺激により対照群(非吸収群)に比べて歯根吸収群のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αの産生量はそれぞれ経時的および加重依存的に増加した。また、加重刺激により対照群に比べて歯根吸収群の吸収窩は対照群(非吸収群)に比べて有意に増加した。以上のことから前年度の歯髄細胞の結果と合わせると矯正治療による重度歯根吸収の発生の原因は歯髄細胞と歯根膜線維芽細胞が非吸収群に比べて多量のPGE_2,IL-1β,6,TNF-αを産生し、さらに強い破骨細胞形成支持能によることが示唆された。
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