研究概要 |
ヒト乳歯および永久歯歯根膜組織由来線維芽細胞(それぞれHPLF-D,HPLF-P),ヒト歯槽骨由来骨芽細胞(hOB),またヒト歯肉由来線維芽細胞(hGF)におけるosteoprotegerin(OPG), receptor activator nuclear kappaB ligand(RANKL)さらにmacrophage colony stimulating factor(M-CSF)のmRNAの発現レベルをRT-PCR法により比較検討した。上記4種類の培養細胞は定常状態でOPGの遺伝子を発現しており,細胞間でそのmRNAレベルに大きな差は認められなかった。また,すべての細胞でM-CSFのmRNA発現が認められ,いずれの細胞においても分泌型M-CSFのmRNAレベルが高かった。一方,hGFを除くHPLF-P,HPLF-DおよびhOBにおいてRANKLの遺伝子発現が認められたが,各細胞間で有意な差があり,そのmRNAレベルは1α,25 dihydroxyvitamin D_3(D_3)添加により濃度依存的に上昇した。RANKLのmRNAレベルはHPLF-PよりもHPLF-Dで高い傾を示し,hOBとほぼ同様な発現が認められた。これらの結果から以下のことが示唆された。1)歯周組織においては破骨細胞の分化に関与する因子のうちM-CSFとOPGのmRNAで一定のレベルで発現している。2)歯周組織における破骨細胞の分化誘導には,骨芽細胞および歯根膜細胞の産生するRANKLが最も重要な因子である。3)D_3に代表される骨代謝因子によりRANKLの発現量が上昇することで,破骨細胞あるいは破歯細胞の分化が誘導される。4)破骨細胞(あるいは破歯細胞)の分化誘導に対する骨吸収因子の影響は,永久歯歯根膜に比較して乳歯歯根膜細胞においてを強く受けており,その効果は骨芽細胞と同程度である。
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